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【光る君へ】お互いに本心を口に出せず、歯車が狂い始めた紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)。ついに道長は正妻を取ることに

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志賀佳織

そして第12回では、まひろのもとに新しい友人が出入りするようになる。病で亡くなった父の妾・なつめ(藤倉みのり)の娘・さわ(野村麻純)だ。なつめの別れた夫と暮らすさわを、今際の際のなつめに会わせるためにまひろが呼びに行った縁で、まひろを慕うようになってくる。

大河ドラマ「光る君へ」第12回より ©️NHK

宣孝はまひろの婿として藤原実資(さねすけ/秋山竜次)をすすめてきたが、実資が赤痢に罹患していたため話は流れる。婿取りに乗り気でないまひろを、宣孝は「霞(かすみ)を食ろうて生きていけるとでも思っておるのか!」と一喝。現実を突きつけられて、まひろの迷いはますます深まる。

一方、道長の希望を受けて、左大臣・源雅信(益岡徹)に息子の婿入りを迫る兼家。その強引さに気が進まない雅信だったが、屋敷を訪ねた道長との様子を見ていた源倫子(ともこ/黒木華)が父にすがって頼み込む。「私は道長様をお慕いしております」。根負けした雅信はこれを聞き入れた。

庚申待(こうしんまち)の夜、まひろは弟・藤原惟規(のぶのり/高杉真宙)とさわの3人で酒を飲んで過ごした。庚申待とは、古代中国起源の行事で、その夜は眠らずに過ごすというもの。もしも眠れば、腹の中にいる3匹の虫が、天帝にその者の罪を告げるとされていた。

しかしその夜、またしても道長から文が来る。読み終えるや否や、まひろは道長の待つ廃邸に走る。「妾でもいい。あの人以外の妻にはなれない」、そう心の中でつぶやきながら。

だが、待っていた道長から聞かされた言葉はあまりに残酷なものだった。「左大臣家の一の姫に婿入りすることとなった」というのだ。嫡妻を取る、しかもその相手はまひろも親しく交流している倫子だ。事実に打ちのめされて言葉を失うまひろ。やっと口をついて出た言葉は心とは裏腹なものだった。「倫子様はおおらかな素晴らしい姫様です。どうぞお幸せに」

「幸せとは思わぬ。されど地位を得てまひろの望む世を作るべく、精いっぱい努めようと胸に誓っておる」。「楽しみにしております」

ああ、どうしてこっちへ行っちゃうの? というぐらい、お互いに本心を口にはできない。次に道長の心の声が響く。「妾でもよいと言ってくれ!」

そうだよ、まひろだってそう心に決めて走ってきたんじゃないの? と、ここでも見る側はやきもきだ。しかし、そうか……とも思う。これが見ず知らずの相手だったら、自分が妾でも耐えられるかもしれない。けれども、相手の嫡妻となる人が近しい間柄だと、こちらの痛みや傷も生々しくなってしまう。

「道長様と私は、やはりたどる道が違うんだと私は申し上げるつもりでした。私は私らしく自分の生まれてきた意味を探してまいります」

ひとつかけ違えたボタンは、どこまで行ってももう元通りにはならなかった。道長も半ばやけになってその夜のうちに、倫子のもとを訪れる。もう二人は別々の道を歩んでいくしかないのか。それでもツインソウルで行くというのは、この先、どんな展開が待ち受けているのだろう。何とも切なくてやるせない展開の2回だった。まひろがまひろらしく生きる様を応援したい。


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