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【韓国ドラマあるある】キムチを分けてもらうシーンに隠された意味とは?

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マチュアリスト編集部

韓国ドラマを見ていると食べたい!と思う料理がたくさん登場しますね。トッポッキ、チゲ、おでん、ジャージャー麺、チキンとビール……、そして食卓に欠かせないキムチ。キムチはただの漬物ではありません。栄養と愛情たっぷりのキムチの話を、韓国通の黒田福美さんに伺いました。

キムチはビタミン補給源

「寒さが厳しい朝鮮半島では、冬の間の野菜不足に備えてさまざまな野菜を漬物にして保存しました。日本の食卓にのぼる口直しのような漬物とは違い、キムチは大切な冬のビタミン補給源なのです」と黒田さん。

「キムチは嫁ぎ先の姑の味を代々嫁が受け継いでいくので、それぞれの家の秘伝があるものです。ひと冬に食べるキムチは膨大な量になるので、近所の人たちが集まり、各家のキムチ漬けを順繰りに手伝います」

ただし、その家の味は薬味にあるので、その家の主婦が、我が家の味として丁寧に準備をするそうです。

『愛の不時着』でも、近所の人たちが集まってキムチを漬けているシーンがありましたね。北朝鮮の近所の奥さんたちからキムチ漬けを手伝いに来るように言われたユン・セリですが、即座に断ってしまいます。
「この家じゃひと冬キムチは食べないっていうの?」と迫る奥さんに、
「ええ、食べません。キムチ好きじゃないので」とセリ。

キムチには愛情がたっぷり

黒田さんは2000年代の初期、ソウルのマンションで一人暮らしをしていました。知り合いのアジュンマ(おばさん)たちから、よく声をかけられたそうです。
「キムチはどうしてるの?」
「え、市場で買ってますけど」
「アイゴ〜! それはいけないね」

当時、黒田さんは度々仕事で東京に帰っていたのですが、ある日ソウルに戻って冷蔵庫を開けると、見たこともない大きな密閉容器が2つ並んでいたそうです。

「ひとつは白菜キムチ、もうひとつはトンチミという水キムチがたっぷり入っていました。そのおいしいことと言ったら! 鍵を預けていた不動産屋のアジュンマの心づくしでした」

「またあるときは、知り合いの方から東京に一斗缶でキムチが届いたことがありました。そのとき、つくづく感じたのは、韓国人にとってキムチは愛情なんだということです」

知り合いからキムチを分けてもらったら、それはあなたが愛されているということだという黒田さん。
「韓国のアジュンマは親しくなると母親が娘にしてやるようにキムチや自家製のおかずをもたせてくれますよ」

そういえば、韓国ドラマの中でも、母親が何種類ものおかずを作って保存容器に入れて、息子や娘や、その友人たちの家に届けるシーンがよくありますね。

キムチもおかずも母の愛情が込められていることがわかります。

「キムチがなければ食事になりません」

ソウル在住のライター、鈴木ちひろさんは、「キムチは韓国の国民食。これがなければ食事になりません」と言います。

「カレーを食べるときも、焼き芋を食べるときも、キムチといっしょ。中国料理店でもパスタ屋でも、おかずでキムチが出てこなかったら、お願いすればキムチをサーブしてくれますよ」というほど、キムチはポピュラーな存在のようです。保育園の給食でもキムチが出るので、韓国の子どもたちはキムチを食べられます。

「漬けたてのキムチのおいしいこと! キムジャンキムチといって、浅漬けで日本人の口にもよくあいますよ」

大量につくったキムチは、韓国ならではの「キムチ冷蔵庫」で保存します。温度設定が0度と普通の冷蔵庫よりも低いので、キムチのほかに果物も入れたりするとか。

「11月の寒さが身にしみてきたころが、キムチを漬けるシーズン。家族中が集まって、何十Kgもある白菜をキムチにしていきます!」

※この記事は『「不時着」しても終わらない』黒田福美(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
※2022年10月21日に配信した記事を再編集しています。

監修者

俳優・エッセイスト

黒田福美

桐朋学園大学演劇科卒業。俳優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られる。80年代から韓国への往来をはじめ、30余年にわたって、放送、著作物、講演などを通して韓国理解に努めてきた。2011年には韓国政府より「修好章興仁章」を受勲。2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会理事、韓国観光名誉広報大使、「日韓お祭り」実行委員をはじめ、麗水エキスポ広報大使、京畿道観光活性化広報大使、大邱、浦項などの広報大使を務める。韓国関連の著書、翻訳など多数。『ソウルマイハート(1、2)、『ソウルの達人』シリーズ、『隣の韓国人 傾向と対策』、『韓国ぐるぐる ソウル近郊6つの旅』、『それでも、私はあきらめない』、『黒田福美の韓方案内』、『「不時着」しても終わらない』など。

桐朋学園大学演劇科卒業。俳優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られる。80年代から韓国への往来をはじめ、30余年にわたって、放送、著作物、講演などを通して韓国理解に努めてきた。2011年には韓国政府より「修好章興仁章」を受勲。2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会理事、韓国観光名誉広報大使、「日韓お祭り」実行委員をはじめ、麗水エキスポ広報大使、京畿道観光活性化広報大使、大邱、浦項などの広報大使を務める。韓国関連の著書、翻訳など多数。『ソウルマイハート(1、2)、『ソウルの達人』シリーズ、『隣の韓国人 傾向と対策』、『韓国ぐるぐる ソウル近郊6つの旅』、『それでも、私はあきらめない』、『黒田福美の韓方案内』、『「不時着」しても終わらない』など。

「不時着」しても終わらない

黒田福美著
主婦の友社刊

「愛の不時着」の背景にある文化の魅力に迫ります。日韓の違いを楽しみ、登場人物に元気をもらいながら、ドラマの世界観に浸る本

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